奈良県地域がん診療連携支援病院
奈良県地域がん診療連携支援病院に係る組織・委員会
当院は、平成26年7月10日付で奈良県知事より「奈良県地域がん診療連携支援病院指定要綱」に基づき、奈良県地域がん診療連携支援病院の指定を受けました。
今後、下記に掲げる組織及び体制を基本に、がん診療連携拠点病院である奈良県立医科大学附属病院と連携を図りながら、がんの専門的な医療の提供等に努めます。
がんについて
一般にがんとよばれている悪性腫瘍は、日本人の3人に1人がかかる病気で、年々増加傾向にあります。
当院では、健診センターでのがん予防はもちろん、がんが発見された場合には上記の各分科会を中心に、手術、抗がん剤治療、放射線治療などの治療を主治医と専門スタッフのチーム医療で納得のいく効果的な治療をさせていただきます。
各分科会の活動
緩和ケアチーム、外来化学療法、がん登録委員会、がん患者サロン「chuwa」 、がん治療相談外来、薬剤指導、リンパ浮腫・マッサージ指導、ウイック・下着指導などの取り組みを行っています。
がん相談支援センターのご案内
当院は奈良県地域がん診療連携支援病院としてがんに関する様々な相談をお受けし、患者さんとご家族のお手伝いをさせていただきます。詳細はこちらをご覧ください。
緩和ケア研修会研修修了者一覧
緩和ケア研修会研修修了者一覧をご覧になりたい方はこちらをご覧ください。
当院のがん診療・治療について
がんの発生する臓器や進行度によって、がんの治療法は多種にわたります。開胸や開腹手術だけでなく、内視鏡的手術や鏡視下手術、抗がん剤治療やホルモン治療、放射線治療などがあります。これらの治療方法を、それぞれ単独に、時にはいくつも組み合わせて治療を行っています。
主に連携している拠点病院
奈良県立医科大学附属病院
【連携内容】
当院で対応できない手術や難治性疼痛に対する神経ブロックなどの治療に関して、奈良県立医科大学附属病院と連携を取り、ご紹介をしています。
連携して実施しているがん診療について
希少がんの診療
「希少(きしょう)がん」とは、『人口10万人あたり 6例未満の「まれ」な「がん」、数が少ないがゆえに診療・受療上の課題が、他に比べて大きいがん種』の総称です。200種類近い悪性腫瘍が希少がんに分類されます。当院では希少がんの種類や進行度に応じて、手術、薬物療法、放射線治療を行っています。当院で対応できない希少がんについては、専門としている施設と連携していますので、最善の治療ができる専門施設をご紹介します。
連携医療機関:奈良県立医科大学附属病院など
どのようながんが希少がんに当たるか、下記の希少がんリストでご確認ください。
(国立がんセンターホームページ)
小児がんの診療
小児がんには、血液やリンパのがん(白血病やリンパ腫など)、脳腫瘍、腎臓や肝臓など 内臓の腫瘍、骨肉腫など骨や筋肉の腫瘍などがあります。小児がんの治療には高い専門性が必要です。当院は小児がん診療を専門としている施設と連携していますので、最善の治療ができる専門施設をご紹介します。
連携医療機関:奈良県立医科大学附属病院など
AYA世代がんの診療
AYA(アヤ)世代とは Adolescent Young Adult(思春期・若年成人)のことをいい、15 歳から 39 歳の方を指します。日本では毎年約 2 万人の AYA 世代の方ががんと診断されています。AYA 世代の患者さんは、診断時から治療にわたって、就学・就職・ 出産・子育てなど様々なライフイベントに直面していることが多く、この時期にがんと診断されると、心身にさまざまな影響を受けることがあります。患者さん一人一人のニーズに合わせた支援が必要となってきます。 AYA 世代のがんの治療には高い専門性が必要です。当院では AYA 世代のがんの診療を専門としている施設と連携し最善の治療を行います。
連携医療機関:奈良県立医科大学附属病院など
妊孕性温存療法(にんようせいおんぞんりょうほう)について
「妊孕性(にんようせい)」とは妊娠するために必要な能力のことをいい、女性にも男性にも関わることです。妊娠するためには卵子と精子が必要となり、卵巣、子宮、精巣など が重要な役割を果たしています。がん等の治療では、手術や抗がん剤治療、放射線治療などによる影響で、妊孕性が低下したり失われたりすることがあります。 「妊孕性温存療法(にんようせいおんぞんりょうほう)」とは、将来自分の子どもを授かる可能性を残すために、がん治療の前に卵子や精子、受精卵、卵巣組織の凍結保存を行う治療のことです。また、妊孕性温存療法により凍結保存した卵子や精子、受精卵、卵巣組 織を用いてがん治療後に妊娠を補助するために実施される治療を「温存後生殖補助医療(おんぞんごせいしょくほじょいりょう」と呼んでいます。 妊孕性温存療法には高い専門性が必要です。当院は妊孕性温存療法を専門としている施設と連携していますので、最善の治療ができる専門施設をご紹介します。
連携医療機関:奈良県立医科大学附属病院など
がんゲノム医療について
「ゲノム」とは、体をつくるための、いわば設計図のようなもので、一人一人違っています。 「がんゲノム医療」では、主にがんの組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べる「がん遺伝子パネル検査」を行い、一人一人の遺伝子の変化や生まれ持った遺伝子の違い(遺伝子変異) を解析し、がんの性質を明らかにすることや、体質や病状に合わせた治療などが行われています。これまでも一部のがんの治療では、すでに標準治療として、がんの組織などを用いて1つ またはいくつかの遺伝子を調べる「がん遺伝子検査」を行い、遺伝子の変化に対応した薬 を使用する治療が行われてきましたが、これはがんゲノム医療に含まれません。多数の遺伝子を同時に調べる「がん遺伝子パネル検査」は、標準治療がないまたは終了したなどの条件を満たす場合に、がんゲノム医療として一部が保険診療で行われます。
全国どこでもがんゲノム医療を受けられる体制を構築するため、国はがんゲノム医療中核拠点病院及びがんゲノム医療拠点病院を指定しています。また、これらの病院と連携して治療を行う病院としてがんゲノム医療連携病院を指定しています。当院では、「がん遺伝子パネル検査」を必要とする患者さんには、主に県内の指定病院に紹介し検査を依頼して、その検査結果に基づいて当院でがんゲノム医療を行います。
がんゲノム医療拠点病院:奈良県立医科大学附属病院
がんゲノム医療連携病院:奈良県総合医療センター、天理よろず相談所病院、 近畿大学奈良病院など
院内がん登録について
院内がん登録は、国が定める「がん対策基本法」に基づき行われる事業で、当院で診断・治療されたすべてのがん患者さんの情報を収集し、登録する仕組みです。当院では、国立がん研究センターで研修したがん登録実務者が、「院内がん登録標準登録様式」にのっとり、2008年から2022年の15年間に9127件を登録いたしました。
収集された情報は、奈良県地域がん登録、国立がん研究センターの全国がん登録データベースへ提供され、当院や奈良県・国でのがん診療の実態の把握、質の向上、がん患者さんへの支援などに役立てることができます。
当院では、登録された情報は「個人情報保護法」を遵守し、患者さんの個人情報保護に細心の注意を払っています。院内がん登録では情報提供時や集計結果においても患者さん個人が特定されることはありません。
がん登録の対象になった患者さんについて、その後の健康調査と治療結果と確認する「追跡予後調査」を行っています。大変重要な調査ですので、ご協力をお願いいたします。同意をいただけない場合は、その由をお申し出ください。その場合でも診療に関しての不利益が生じることは一切ございません。
■院内がん登録数(2022年)
704件
■臓器別がん登録数(2018年~2022年)
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|---|---|
口腔がん | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 |
耳鼻咽喉がん | 7 | 9 | 8 | 6 | 8 |
食道がん | 9 | 7 | 8 | 6 | 9 |
胃がん | 112 | 116 | 98 | 125 | 91 |
大腸がん | 129 | 146 | 139 | 166 | 98 |
肝がん | 29 | 26 | 17 | 12 | 18 |
胆嚢胆道がん | 16 | 20 | 15 | 26 | 12 |
膵臓がん | 25 | 22 | 26 | 27 | 25 |
乳がん | 83 | 81 | 74 | 99 | 107 |
肺がん | 95 | 82 | 88 | 113 | 102 |
脳腫瘍 | 12 | 3 | 5 | 3 | 4 |
甲状腺がん | 5 | 7 | 3 | 6 | 13 |
皮膚がん | 3 | 11 | 3 | 11 | 10 |
骨軟骨腫瘍がん | 1 | 0 | 0 | 2 | 2 |
腎腫瘍 | 10 | 8 | 6 | 5 | 5 |
腎盂尿管がん | 10 | 10 | 6 | 5 | 4 |
膀胱がん | 22 | 21 | 17 | 20 | 20 |
前立腺がん | 59 | 63 | 54 | 67 | 78 |
男性性器がん | 1 | 2 | 2 | 2 | 1 |
卵巣がん | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
子宮がん | 5 | 5 | 5 | 3 | 0 |
白血病 | 30 | 33 | 34 | 50 | 39 |
リンパ腫 | 40 | 37 | 37 | 43 | 37 |
その他 | 9 | 11 | 7 | 16 | 21* |
合計 | 714 | 724 | 651 | 813 | 704 |
*十二指腸・小腸腫瘍 8例、縦隔・胸膜腫瘍 5例、 副腎腫瘍 4例を含む
■男女別登録数(2022年)
男性389件(55%) 女性315件(45%)
■年齢層別がん登録数(2022年)
40歳代 15件(2.1%)、50歳代 51件(7.2%)、60歳代 116件(16.5%)、70歳代 278件(39.5%)、80歳代 200件(28.4%)、90歳代 38件(5.4%)
■来院経路(2022年)
他院からの紹介 66.0%、 自分で来院 7.6%、 他疾患経過中24.2%
■地域別がん登録数(2022年)
桜井市 216件(30.6%)、 宇陀市 129件(18.3%)、 橿原市 125件(17.8%)、 吉野郡 42件(5.9%)
■当院でがん治療を受けられる割合(2022年)
89.2%
■放射線治療件数
放射線治療 | 患者延べ人数 |
---|---|
平成24年度8月〜(8ヶ月間) | 1785 |
平成25年度 | 4665 |
平成26年度 | 3187 |
平成27年度 | 3863 |
がん患者さんの仕事への支援
がんは、早期発見や治療法の進歩により、治療と仕事を両立することが可能になっています。しかし、患者さんの仕事を続けられないという思いや、職場の理解、支援体制の不足から離職に至る場合があります。当院では、「がん相談支援センター」で、がん患者さんの仕事に関する相談窓口を開設しております。治療を続けながら働き続けたい、治療中だが仕事を見つけたい、雇用保険等の社会制度を知りたい等の相談に対して、当院の相談員が、解決のための提案や受けられるサービスについて情報提供を行っています。
また、「奈良産業保健総合支援センター」、がん拠点病院においても仕事に関する相談窓口を設けており、それら機関と連携を図りながら対応しています。
仕事や社会制度についてのお困り事があれば、まず、当院のがん相談支援センターへ気軽にご相談ください。