院内誌まほろば87号
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表紙
「金閣寺」
正式名称を鹿苑寺(ろくおんじ)といい、相国寺の塔頭寺院の一つです。建物の内外に金箔を貼った3層の楼閣建築である舎利殿は金閣(きんかく)、舎利殿を含めた寺院全体は金閣寺と呼ばれています。
元は鎌倉時代の公卿、西園寺公経の別荘を室町幕府三代将軍の足利義満が譲り受け、山荘北山殿を造ったのが始まりとされています。撮影 老健施設まほろば 田平 隆昭
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「C型肝炎について」
内科部長 簗瀬 公嗣
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最近テレビのCMでも放映されていますが、今回はC型肝炎についての話です。C型肝炎とは、肝臓の細胞に感染を引き起こすウイルスであるC型肝炎ウイルスに感染して引き起こされる肝臓に起こる炎症の病気です。
C型肝炎ウイルスが発見されたのは、大昔のことではなく今から28年前の1989年に米国で発見されました。感染する原因は、感染している人の血液の輸血、刺青、針刺し事故など血液を介したものですが、その他、半数は原因は不明であると言われています。
感染した後の経過は、急性肝炎を発症し、2~3割はそのまま治癒しますが、7~8割は、治癒せず慢性肝炎となり、持続感染を引き起こします。これがいわゆる慢性C型肝炎と言われる病気です。
C型肝炎というときは、一般的にはこの慢性C型肝炎を指します。こうして持続感染となったC型肝炎の厄介な所は、ほとんど症状が無いことです。症状が無いうちに病状が徐々に進行し、肝硬変や肝がんに至ってしまいます。
このような状態になるのを防ぐには、現在C型肝炎に感染しているか否かを無症状の段階で診断することです。この診断のためには、現在血液検査を行うことで、簡単に診断出来るようになりました。さらに治療については、ここ数年で飛躍的に進歩しました。
今まではインターフェロンを中心とした副作用の多い治療法で効果も満足のいく成績ではありませんでしたが、最近開発された経口内服薬は、副作用も少なく、効果も90%以上得られるような飲むだけでよい薬剤です。昔と比べ夢のような治療法が出てきました。今世紀にはC型肝炎は撲滅される時代になったと言っても過言ではないでしょう。ですから、今後健診を受けられる際にはC型肝炎の検査を受けられるよう是非お勧めします。
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「肝炎の薬について」のお話
薬剤師 澤田 祐子
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一般的にあまり馴染みのない「肝炎」とは、名前の通り「肝臓に炎症が起こる」事を言います。肝炎の原因としてウイルス性が多く、「A型・B型・C型」といった感染経路や症状が異なる種類の肝炎があります。その中で肝硬変や肝癌へと慢性化することもあります。
今回はC型肝炎に対する治療薬について、とりあげたいと思います。今まではインターフェロン(IFN)製剤という注射薬のみ、もしくは内服薬との併用等が治療方法の代表でした。
IFNとは、体内でウイルス感染した際に作り出される抗ウイルス作用をもつタンパク質で、注射薬という形で定期的に施行し、体内のウイルス防御機能を活性化させます。間隔・期間は様々であり、自己注射での施行が必須の治療となっていました。それが、近年発売された新薬によりIFN製剤施行せずに、内服薬のみでの治療が可能となりました。
その治療薬として登場したのが、ウイルスの増殖を抑制する「ハーボニー(1錠/日)」または「エレルサ(1錠/日)・グラジナ(2錠/日)の併用」です。どちらも12週間継続して服用することでかなり高い効果が得られます。
しかし、この疾患は自覚症状がほとんどないため、早期発見がとても大切となります。
最近ではコマーシャルでも宣伝されていますが、過去に輸血経験のある方など、感染リスクが高い方はもちろん、少しでも思い当たる事例があれば、対象であるのかをインターネット等で確認してみましょう。
医療費助成制度などを利用して治療するという方法もありますので、感染リスクの高い方は感染の有無を確認するために早めの検査を受けるようにしましょう。
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「慢性閉塞性肺疾患の食事」
管理栄養士 尾田 香
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慢性閉塞性肺疾患(以下:COPD)とは、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患です。喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病で日本でも死亡率が増加しています。
呼吸は呼吸筋を動かして行いますが、COPDになると悪くなった肺をカバーするために呼吸筋を一生懸命動かそうとするので、健康な人より呼吸にたくさんのエネルギーが必要となります。ところが、息切れによって食欲が落ちてしまうため必要なエネルギーを摂りにくくなり、その結果ますます体力や筋力が落ちて、息切れが強くなるという悪循環に陥りやすいのです。重症のCOPDの方にやせ型の人が多いのは、このように十分な栄養およびエネルギーが必要なのに不足してしまう状態にあるからです。
食事は体重管理おこない必要な栄養を意識してとる事が重要です。やせ型の方で3食の食事で十分な栄養が摂れない場合、分食や栄養補助食品を追加します。また調理に油脂を取り入れる事でエネルギーアップをはかる事ができます。
たんぱく質は筋肉を作る材料となります。良質なたんぱく質を含む魚・肉・卵・大豆製品・乳製品を積極的に摂るようにします。
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「ウィメンズヘルス領域における理学療法」
リハビリテーション科
理学療法士 杉本 由貴 -
ウィメンズヘルスという言葉をご存知でしょうか。以前は臓器別医学が中心でありましたが、現在では女性の健康を生涯にわたって考える分野となっています。ウィメンズヘルスに関する内容は多岐にわたりますが今回は月経前症候群(以下PMS)に対する運動療法ついてお話したいと思います。
PMSとは月経前3~10日前から出現する精神的あるいは身体的な症状で月経発来とともに軽減ないし消失します。乳房痛、下腹部痛、頭痛、腰痛などの身体症状、イライラ、抑うつ状態、眠気、不安感などの精神症状などがあらわれたりします。月経前に何らかの症状を自覚する女性は80%に上ると言われていますが、PMSに対する認知度は女性でも低く男性のPMS認知はわずか12%と言われています。
そんなPMSを緩和するために有酸素運動をしてみるのはいかがでしょうか。有酸素運動にはβエンドルフィンの分泌を促進する効果があり、それによる精神症状の緩和が期待できます。具体的に推奨されている種目はないのですが軽いランニング、ウォーキング、ヨガ、ピラティスなど行っている人は行っていない人よりもPMSの症状が軽いとの報告もあるようです。
うまくPMSと付き合って、毎日を楽しく過ごしていきたいですね。