院内誌まほろば86号
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表紙
「室生寺」
室生寺は、奈良県宇陀市にある真言宗室生寺派大本山の寺院で、奈良盆地の東方、三重県境に近い室生の地にある山岳寺院です。本尊は釈迦如来。
平安時代前期の建築や仏像を伝え、境内はシャクナゲの名所としても知られています。女人禁制だった高野山に対し、女性の参詣が許されていたことから「女人高野」の別名があります。撮影 リハビリテーション科 武田 将直
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「プライマリケアって何」
総合診療科 医師 大住 周司
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前回の話までを簡単に言うとプライマリケア医は、「普段から近くにいて、何でも診てくれる」「対応できない問題は高次機関と連携・紹介してくれる」「臓器だけでなく身心・社会背景を総合的に診てくれる」「継続的な診療、必要あれば訪問診療や往診」「その人の状況を考慮した内服処方(例:認知症・働き盛りなど)」「予防的視点(例:予防接種・健診など)」「治らない病気への日常生活介入、老化も治らない病として地域住民に理解を深めるなど」そして「地域の中にネットワークの構築」などが役割になります。何より地域の医療者みんなで、その人(地域住民一人一人)の医療・福祉・介護・保健を考えていく行為そのものがプライマリケアなのです。ただ近くの開業医すべてがプライマリケア医というわけではありません。大学や総合病院の専門外来と同様の診療スタイルを行う所もあります(例:美容外科などは代表)。病院では専門科に専従していたが、開業後はプライマリケアの機能の大部分を網羅した診療を行っている方もいます。開業までの経験、開業後の経験を元に切磋琢磨を積み重ねてきた方々です。最近では、初期研修終了直後から、プライマリケア学会の提唱する内容に沿ってプライマリケアの専門家を目指してトレーニングを積みプライマリケア(専門)医となった医師も育ってきています。高齢化に伴い、今後プライマリケアの必要性は高まっていくと考えます。人口減少が極まり人口構造が変化してしまうまでは特に。
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「コレステロールを下げるお薬:スタチン系」のお話
薬剤師 福井 麻樹
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コレステロールは体を作る上で大切な役割を担っています。しかしコレステロールを摂り過ぎると体内に余分なコレステロールが蓄積してしまいます。その余分なコレステロールが血管の壁に蓄積した結果、血管が固く・狭くなり、動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞などを引き起こしてしまう原因になります。
コレステロールを下げるためにはまず規則正しい生活とバランスのとれた食事、適度な運動が原則です。しかし、それでもコレステロールが下がらない場合、医薬品の力を借りることがあります。そのコレステロールを下げる医薬品の一つである「スタチン系」と呼ばれるお薬についてご紹介します。
コレステロールは食べ物から摂取するだけではなく、私たちの体の中でも作られています。その体の中でコレステロールを作る働きを抑えてくれるのが「スタチン系」というお薬です。一般的に悪玉コレステロールと呼ばれる‘LDLコレステロール‘が基準値より高くなる病気では、このスタチン系薬が一番よく使用されています。またコレステロール低下作用の他にも、抗動脈硬化作用などを持ち、心臓や脳血管系の病気の予防に大きく貢献しています。
もちろんこのような薬を飲まない体作りが大切です。しかし、知らず知らずのうちにLDLコレステロールが高くなってしまっても、初めは体に何の変化も感じません。そのため気が付いたときには慢性的にLDLコレステロールが高くなり、脳血管や心血管が詰まる可能性が高くなります。LDLコレステロールが高くなることにより、二次的に起こる病気を防ぐためにも、日頃からストレスを溜めない規則正しい生活を心がけましょう。
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「コレステロール」
管理栄養士 藤本 幸余
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コレステロールはなじみのある言葉ですが、血液中のコレステロールと、食物に含まれるコレステロールがあります。血液中のコレステロールは体内で作られる脂質で、細胞やホルモンのもととなります。種類があり、LDL
(悪玉)とHDL(善玉)が主です。LDLは体内にコレステロールを送り、HDLは余分なコレステロールを回収します。LDLが増えすぎるとその機能がまわらずに血管がつまり、脳卒中や心筋梗塞の原因となります。また血液中の別の脂質で、エネルギーのもととなる中性脂肪が増えすぎるとHDLが減り、やはり悪循環をきたします。現代は食物コレステロール(卵や肉、魚卵に多い)の他、肉や乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸、油脂に含まれるトランス脂肪酸をとり過ぎる傾向にあります。カレーやラーメン、丼物やハンバーガーなどのファーストフードや揚げ物、菓子に多く含まれます。これらのとり過ぎはLDLを増やす原因となります。しかしLDLも必要なコレステロールですので、全く食べないというのは危険です。余分な油脂は控えながらも、三度の食事でバランスよくとる必要があります。食物繊維や、緑黄色野菜に多い抗酸化物質は、LDLを下げる役目があります。それらとあわせて肉や魚、卵などの良質なたんぱく質を調理の仕方に注意しつつ、適量とるようにこころがけましょう。年末・年始、いま一度食生活を見直す機会を作りましょう。
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「ニート(NEAT)」
リハビリテーション科
作業療法士 髙﨑 菜々恵 -
今回は非運動性熱産生、通称NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)について紹介します。
NEATとは運動以外の身体活動、日常の生活活動で消費されるエネルギーのことを指した言葉です。身体活動によるエネルギー消費は、スポーツなどの特別な運動によって生じるEATと、日常生活を送る上で必要な身体活動によって生じるNEATに分類されます。
EATは身体活動におけるエネルギー消費全体に占める割合のわずか30%と言われています。ランニングや水泳などの特別な運動が含まれ、実践するには生活の中で運動する時間を確保する必要があります。またジムに通うなどお金が必要になったり、人によっては運動が長続きしないこともあると思います。
一方でNEATの場合は身体活動におけるエネルギー消費の70%と大半の割合を占めています。また日常生活の中でできる運動を取り入れるため時間やお金も節制できます。では具体的にNEATとはどういったことを行えば良いのでしょうか。例えば通勤ではバスや電車の一駅分を歩く。エレベーターの使用を避けて積極的に階段を使う。車を遠くの駐車場に止める。自宅では家事を積極的に行うことなどが挙げられます。
座っている時間が長いと、糖代謝異常、肥満や死亡率・心疾患の増加などに繋がりやすくなるとされています。しかし例に挙げたように生活の中で動く工夫をすることで、様々なリスクを減らすことができます。いつもの日常生活の中に、NEATを取り入れてみてはいかがでしょうか。