院内誌まほろば80号
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表紙
「龍田大社」
奈良県生駒郡三郷町
今から約2100年前、第十代・崇神天皇の時代、国内が騒然としているなか、天皇の御夢に大神様が現れ、御神託を授けられました。その通りにお社を造営すると、作物は豊作、疫病は退散したと伝えられ、これが創建とされています。 7月の第一日曜日に行われる風鎮大祭は、例大祭と同じ意味合いのお祭りで、年間行事中最も重儀とされています。祭日1週間前から前日までの、1日2度の御饌祭(みけさい)に始まり、結願日(けちがんび)である7日目に風鎮大祭が行われます。祭典後には、剱舞や民踊などの神賑奉納行事が行われ、締めくくりに神様に火のごちそうである「風神花火」をお供えします。花火の力強くも美しいさまは見るものを引き付けます。
撮影 診療情報室 岡田 真一
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「ロコモティブシンドローム」
整形外科 部長 花房 寛典
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皆さん「健康寿命」という言葉をご存知でしょうか?健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことです。平均寿命から健康寿命を差し引くと、男性で約9年、女性で約12年あります。言い換えれば、その期間は何らかの疾患を抱えた状態で生活しなければなりません。 介護が必要な状態になると、本人だけが大変なのではなく、家族や周囲の人にも身体的、経済的負担が生じます。 要支援や要介護となった原因の第1位は運動器の障害(以下、脳血管疾患、認知症、高齢による衰弱などが続きます)と言われおり、運動器の健康を維持することが、健康寿命を伸ばすことにつながります。 整形外科では、2007年よりロコモティブシンドロームという概念を提唱し、運動器を健康に保つ対策に取り組み始めています。ロコモティブシンドロームとは、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板などの運動器のいずれか、もしくは複数に障害が起こり、歩行や日常生活に何らかの障害を来たしている状態を言います。 運動器の障害と言えば、高齢者を思い浮かべがちですが、骨や筋肉量は20~30代がピークと言われており、若いうちに適度な運動習慣をつけ、バランスの取れた食生活をし、十分な骨量や筋肉量を保っておくことが大切です。 ご自身の移動機能がどの程度であるかを確認したい方は、ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトにてロコモ度テストを行うことができます。皆さんも一度試してみてはいかがでしょうか?
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「まつ毛がフサフサになるお薬」
薬剤師 梅本 早苗
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2014年9月に睫毛(まつげ)貧毛症治療薬・グラッシュビスタの発売が開始されました。睫毛貧毛症の原因としては、抗がん剤など薬物の影響、感染症、加齢、皮膚疾患、マスカラなどによる睫毛ケアのダメージなどがあります。 現在睫毛美容液は色々なお店で取り扱われていますが、このグラッシュビスタは医療用医薬品として厚生労働省から製造販売承認を受けた国内初・唯一の睫毛貧毛症治療薬です。 一般の医薬品とは違い、医療機関を受診して処方せんを発行してもらわなければ購入することができません。この薬を毎日寝る前にまつ毛の付け根に塗ると、まつ毛が長く、太く、濃くなると言われています。 国内初と言いましたが、実はこの成分は緑内障治療薬としても使われています。この系統の緑内障治療薬の点眼をする患者さんには副作用対策として「点眼した後は眼の周りを洗うかよく拭き取って下さいね」と指導をしています。これをしないと、まつ毛がフサフサになり、眼の周りが黒く色素沈着したりします。 この副作用の一部を逆手にとったのがグラッシュビスタです。しかし長期使用することで、色素沈着も起こるので注意が必要です。 気になる価格ですが、保険適用が認められず自由診療処方で保険適応外10割負担になります。医療機関によって価格は異なりますが約1~2万円と言われています。 他に睫毛を増やす方法は色々ありますが、各々の利点、欠点を理解して使用することが大切かと思います。
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「半側空間無視」
リハビリテーション科
作業療法士 尾崎 由佳 -
みなさんは『高次脳機能障害』についてご存知ですか?高次脳機能障害とは、“脳損傷が原因の記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など各種の認知機能障害”と定義されています。 みなさんは運動障害や感覚障害はないが、食事の片側だけ食べ忘れる、片側の髭を剃り忘れる、歩行中に片側によくぶつかるなどの場面に遭遇したことはありませんか?このような症状を見かけたら『半側空間無視』かもしれません。半側空間無視では、“全視野が入っているにも関わらず、意識して注意を向けない限り主に左(病巣の反対)側の物体に気づかない”という現象が見られます。半側空間無視は右大脳半球損傷者の約4割に出現する代表的症状の1つです。今回はそのような場面での環境の工夫点をいくつかご紹介いたします。 工夫点としては、患者様の気づきやすい色への変更・位置の移動、患者様との確認動作(見て触れて確認する)、適宜の声掛けを行うことなどの方法があります。色や位置を変更する事や一緒に確認すること、声掛けを行うことで患者様自身に意識して注意を向けて頂くことが大切です。確認や声掛けは患者様の左(病巣の反対)側から行いまずは患者様自身の病識を高めるようにしていきましょう。