院内誌まほろば60号
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表紙
「正暦寺」(しょうりゃくじ)
奈良市菩提山町
正暦寺は、奈良市菩提山町(ぼだいせんちょう)にある寺院。
菩提山龍華寿院と号し、奈良と天理の間の山あいに位置します。
菩提山真言宗の本山(単立寺院)。「錦の里」と呼ばれ、紅葉の名所として知られています。また、境内を流れる菩提仙川の清流の清水を用いて、初めて清酒が 醸造されたという伝承があり、「日本清酒発祥之地」の碑が建っています。
JR奈良駅・近鉄奈良駅から、米谷町行きバスで23分「柳茶屋」
下車、徒歩30分。撮影/医療情報室 奥田 泰弘
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中皮腫は臓器や体腔表面を覆う漿膜の中皮細胞から発生する腫瘍で、有効な治療法のない悪性腫瘍です。原因としては、石綿(アスベスト)が重要です。石綿は建材などに広く使われており、それによる汚染が社会的問題となっています。
動物実験や人間での調査から石綿が発がん物質であることは確実なのですが、どのようなメカニズムで中皮細胞をがん化させるかは解明されていません。多く の発がん物質はDNAを直接障害して遺伝子異常を誘発し、がんを発生させることが証明されていますが、石綿には直接DNAに結合して遺伝子異常を誘発する 作用はありません。近年、注目されてメカニズムは石綿のような細い繊維が体内に入ると、異物を細胞内に取り込んで処理する大食細胞(マクロファージ)が上 手に細胞内に取り込めないため、炎症が持続することによるとする説が有力とされています。例えれば、魚の骨がノドに刺さってイライラするようなものでしょ うか。そうすると石綿のような繊維状物質は発がん物質となる恐れがあることになります。
現在、ハイテク材料として夢の素材として注目されている多層カーボンナノチューブには石綿と同じような直径と長さの繊維があり、実際、このナノチューブを投与された動物に中皮腫が発生することが報告されました。
今後、このようなハイテク材料が第2の石綿とならないよう社会的な取り組みが必要となるでしょう
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食べ物どうしの中にも食べ合わせが悪い物があるように、薬と食べ物の間にも相性の悪い組み合わせがあります。
1.抗血栓薬のワーファリンと緑黄色野菜・納豆:ビタミンKは血を固まらす物質が生成するのを助ける働きをします。ワーファリンは、このビタミンKの効果 を落とし、血を固まりにくくするのです。緑黄色野菜にはビタミンKが含まれています。そのため、ビタミンKを多く含む野菜を大量(ボールにお浸し一杯程 度)に食べるとワーファリンの作用が減弱することがあるのです。しかし、緑黄色野菜を全く摂らないことは栄養上よくないので、お浸しやお味噌汁に入ってい る程度は摂りましょう。納豆菌は腸内で大量のビタミンKを産生します。ワーファリンの作用が減弱するので、ワーファリンの服用中は納豆を食べないようにし ましょう。
2.ミノマイシン等のテトラサイクリン系抗生物質と牛乳:テトラサイクリン系の抗生物質は牛乳及び乳製品中のカルシウムイオンなどと結合し、吸収が阻害されます。そのため、牛乳での服用は避けましょう。
3.降圧薬であるアムロジン、コニール等のカルシウム拮抗薬とグレープフルーツジュース: 降圧薬であるアムロジン、コニールは、肝臓でつくられる酵素の 働きにより分解され、体からでていきます。グレープフルーツジュースは、この働きを阻害するため、降圧薬の血中濃度が下がらず、薬効が増強する可能性があ るのです。
ここには数例しかあげていませんが、まだまだたくさんあります。このように悪い組み合わせがあることを知り、より安全に薬を取り扱うことが大切です。
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昔から言い伝えられてきた「食べ合わせ」。起源は中国伝来の「陰陽五行説」にあり、長い年月の間に広まったようです。科学的根拠は乏しく、現代の栄養学においては否定されているものも少なくありません。
○食べ合わせの悪い例「ウ ナギと梅干し」…「ウナギと梅干しを食べるとおなかが痛くなる」という話を聞かれた方はおられるでしょうか。ウナギの栄養価は非常に高く、ビタミンAやビ タミンB1等、健康を保つためのビタミンが豊富。梅干しには、食欲増進や疲労回復効果の高いクエン酸が含まれており、この2つの食べ合わせは現代では良い 組み合わせであると言えそうです。しかし、昔は梅干しの食欲増進効果で過食になることを懸念し贅沢を戒める意味もあり、悪い食べ合わせとして通説になった ようです。脂を摂取する機会の少なかった昔の日本人の場合、ウナギの脂が梅干しの強い酸味と刺激し合って消化不良を起こしたケースもあったようで「おなか が痛くなる」というのはあながち迷信と言えなかったかもしれません。
○食べ合わせの良い例「と んかつとキャベツ」…とんかつの付け合わせによく出てくるキャベツ。キャベツに含まれている食物繊維はとんかつの脂肪の吸収を抑え、塩素や硫黄のミネラル が消化を促進してくれる。また、ビタミンU(キャベジン)が胃酸の分泌を抑えて、胃の粘膜の修復を助けてくれる。つまり、とんかつとキャベツを一緒に食べ ることで、豚肉の酸化を抑え胃もたれを防ぐ効果があるのです。(加熱するとビタミンUは減少するので生キャベツがおすすめ!)昔からある「とんかつにキャ ベツ」を添える習慣はとても理にかなっていたと言えそうです。
その他、「飲み物と食べ物」「薬と食べ物」など食べ合わせには、良いものや悪いものの例がたくさんあります。正しい知識を得て健康のために活かしていきたいものです。
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「言語聴覚療法について」
言語聴覚士 池田 史佳
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言語聴覚士の行うリハビリテーションには大きく分けると、言語聴覚療法と摂食機能療法があり、今回は言語聴覚療法についてお話させていただきます。
言語聴覚療法とは、言語聴覚障害をもつ患者様に対し、コミュニケーション能力の改善によってQOLの向上を図っていくものです。当院での主な対象は、脳血管障害による失語症・構音障害・高次脳機能障害の患者様です。
失語症は、聞く・話す・読む・書くというコミュニケーション能力が障害され、読書や映画鑑賞など趣味的活動といった生きがいをも奪ってしまう可能性があ ります。自発話の流暢性や聴覚的理解の程度などにより、ブローカやウェルニッケなどのタイプがあり、絵カードなどを使用してそれぞれのタイプに即したアプ ローチを行っています。
構音障害は、発声発語器官(顔面や舌)の運動障害により喋りにくくなってしまう状態です。その原因を見極め、呼吸・発声・構音などそれぞれの原因に沿っ た訓練を実施します。高次脳機能障害は、認知症・注意障害・記憶障害・失行・失認などの症状が出現し生活に支障が出る為、その機能を改善するようアプロー チしています。
これらの障害は複合的に起こることが多く、コミュニケーション障害の為にイライラや不安感など心理的問題を生じることが予想されます。このような問題の 軽減を図る為に、言葉だけにこだわらず、例えばアラームやコミュニケーションノートの利用などその方に合った代償手段を考え、日常で活用するための訓練や 環境調整も行っています。
コミュニケーションは人が生きていく上で必要不可欠なものです。人とのつながりを持つためのものであり、自己表現の手段でもあります。通じ合える喜びを 共有するため、多職種とも連携をとりながら頑張って行きたいと考えております