院内誌まほろば55号
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表紙
「月ヶ瀬の梅林」(つきがせのばいりん)
2005年4月、旧月ヶ瀬村は市町村合併により奈良市へ編入されました。月ヶ瀬の中央には渓谷美を描きながら五月川が流れ、その両岸に梅樹が立ち並びま す。これが「月ヶ瀬梅渓」と言われ、大正11年には名勝地に指定されています。1万本とも言われる月ヶ瀬の梅林は{2月下旬~3月下旬の開花期は渓谷の両 岸に梅景色が広がり、茶屋も出店し、多くの観梅客で賑わいます。
撮影/本館3階 看護師 上田 真奈美
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中年以降の年代になると、荷重に耐えていた関節が退行変性をおこし、有痛性の関節運動制限を呈するようになり、変形性関節症とよばれます。変形性関節症の うち最も頻度の高いものが、膝関節におこる変形性膝関節症です。日本人の生活様式である畳の上に座るという習慣が影響していると考えられており、中年期以 降のとくに肥満した女性に多い疾患です。膝関節の腫脹、疼痛を主訴とし、安静時痛はほとんどなく運動時痛が主体で、特に運動開始時と長時間の歩行で強く生 じます。関節症の進展とともに最大伸展位をとることができず、高度になると、内反膝や外反膝の変形がおこります。血液所見に特異な異常所見を認めません が、レントゲン検査では関節軟骨の摩耗とともに、関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化像、骨棘形成などを認めるようになります。保存療法は、消炎鎮痛剤の投 与、ヒアルロン酸の関節内注入や温熱療法で痛みの暖和を図ります。また変性を生じた関節面になるべく過剰負荷をかけないように、体重の減量、筋力強化など の生活指導を行います。保存療法に抵抗性のものには手術療法が行われます。比較的若い患者さんで変性が関節全体におよんでいない場合には、骨切り術によっ て変形を矯正しますが、高度の関節破壊には人工膝関節全置換術が行われます。
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関節リウマチは免疫系の働きが異常に進むことによって炎症が起き、関節が痛んだり腫れたりする病気です。現在この病気の治療には、抗リウマチ薬と呼ばれる 「免疫の働きを抑えたり調節したりする薬」あるいはステロイド薬、非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれる「炎症を抑える薬」が使われています。しかし、これら の薬で治療を受けているにもかかわらず十分な効果が得られない患者さんがおられます。エンブレルはこれらの患者を対象に使われ、効果が認められています。 関節リウマチによる炎症、痛みを引き起こす原因の1つがTNFという物質です。TNFは細胞表面のTNFレセプターと結合すると炎症反応を引き起こしま す。関節リウマチの患者の場合、TNFが過剰に作られる上に、その作用を調整する部位が足りない状態となっています。その結果TNFの働きが止められず、 炎症や痛みが起こってしまうのです。エンブレルはその調整する部位である可溶性レセプターを22つなげた薬です。この薬は体内のTNFをより強い力でつか まえることで、TNFが細胞表面のTNFレセプターに結合するのを阻止し、関節リウマチに効果を発揮します。しかしTNFには、体を細菌などの病原体から 守る働きがあります。エンブレルによってTNFの働きを抑えると免疫の働きが低下し感染症や結核にかかりやすくなることがあります。したがって本剤治療中 の患者は常に体調の変化に注意する必要があります。又これらの副作用を予防するためにも患者さん自身がエンブレルという薬についてよく知ってもらうよう指 導することが大切です。エンブレルは医師が週2回、皮下注射により投与する薬ですが、希望される患者さんで一定の条件を満たす方は、自己注射が可能になる という特徴をもっています。
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関節痛を防ぐには、日常生活で関節に負担をかけない食事、また、関節痛をおさえる食事を普段から心掛けることが大切です。その為には、標準体重の維持や骨 や筋肉の強化が必要となります。そしてこれらを強化するには、サプリメント(コラーゲン)や美容食品のみに頼らずとも、1日3度の適度な食事で補うことが さきます。丈夫な骨作りのためにはカルシウムを摂りましょう。カルルシウムの多く含む食品は、海草、牛乳、小魚などです。またカルシウムの吸収を助けるビ タミンDを含む食品を一緒に摂ることも重要です。サバ、サンマ、イワシなどの青魚に特にビタミンDが多く含まれています。これらの食品を創意工夫して調理 して食事にのせましょう。青魚は血液をサラサラにもするので、血行を促進し関節痛には大敵な体の冷えを改善することにも繋がります。魚の調理方法として は、特に魚を骨ごと食べられる煮魚をおすすめします。また骨だけでなく筋肉を丈夫にすることにより、筋肉が骨のクッションとなって骨にか,かる体重の負担 を軽減してくれます。筋肉をつけるためには、魚や肉などの良質のタンパク質を摂りましょう。最後に、標準体重以上の入は食事の量や質を考え直す必要があり ますが、急激な減量は却って危険ですので、先に述べた栄養素を適度に摂りつつ、徐々に減らすようにしましょう。
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膝関節痛を訴える人の半数以上が変形性膝関節症であると言われています。今回はその予防策(痛みに対する対処法を理学療法士の観点から)を述べていきます。
そもそも、膝には平地歩行で体重の3倍、走行時で約10倍、階段で約7倍の荷重がかかると言われています。つまり、大きな衝撃が加わるため、他の要因と重 なり痛みを生じやすい関節と言えます。特にこの病気では軟骨が磨り減ることにより、骨同士がぶつかり痛みが生じやすくなります。そこで日常生活で気をつけ たいポイントを挙げると、
①太りすぎには注意(体重を1kg減らすことで、片膝にかかる負担は3~5kg減る)②筋力で関節をサポート(歩き始めのこわばりや痛みを軽減)
③クッション性の高い足にあった靴を選ぶ。
などが挙げられます。次に発症初期の痛みに対しては、まずは関節を冷やさないことが重要です。起床直後などこわばりがある場合、市販の温熱グッズや、サ ポーターを使用したり、凝りをほぐす様に患部を擦ることが効果的です。関節の痛みが続くと二次的な筋肉の凝りが進み、関節の可動範囲が狭まります。よって 膝裏の筋肉を伸ばし、関節周りの循環を良くしましょう。最後に、膝関節痛を生まない為にも①理想体重を保つ。
②立ったままでの膝の屈伸運動を行う。
③足にあった靴で適度に散歩(20分程)をする
など、膝関節周囲の筋肉を鍛えることで予防になります。皆さんもできることから始めてみて下さい。