院内誌まほろば51号
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表紙
「大普賢岳」
大峰山脈北部にそびえる大普賢岳は、弥山・八経ヶ岳以北における最高峰である。岩壁を露出させた荒々しい山容はアルぺンムードに満ち溢れ、山頂からの展望は関西の屋根といわれる大台ヶ原や八経ヶ岳方面が見渡せる。
撮影/内科 宮高 和彦
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最近の診断・治療技術の発展により多くのがんで5年生存率は良くなってきていますが、膵臓がんは早期発見や治療が困難な難治性がんの代表的なものです。 日本膵臓学会の全国集計によると、手術可能な時期に発見される膵臓がんは全体の約40%、切除例の5年生存率は約17%、腫瘍の直径が2cm以下で発見さ れる例は8.5%にすぎず、その5年生存率も約40%にすぎません。
膵臓がんが難治性である原因としては、他のがんと比較しても早期より周囲臓器へ浸潤し、転移するという悪性度の高さがあげられます。なぜ、このように 悪性度が高いかは良く分かっていませんが、膵臓がんの細胞には他のがん細胞にはない特徴があります。膵臓は消化酵素の多い臓器で、がんによって臓器がこわ されると、消化酵素が働き細胞自体が消化されてしまいます。そのため膵臓がんは、がん細胞の周囲にコラーゲン線維をたくさん作らせて消化酵素の攻撃を回避 するような性質を持っています。ところが、たくさんの線維で固められると血管からの酸素や栄養ががん細胞に届きにくくなります。そのような血流の少ない状 態では腫瘍内部には酸素が行き届かなくなり栄養分も不足します。膵臓がんの細胞は、低酸素・飢餓状態でも生きていけるような特殊な細胞に変化することで、 このような環境に適応して生存するようになります。手術でとりだした腫瘍から細胞を分離して培養液の中で飼ってみると、糖分などを除いた低栄養の培養液で は、血管の豊富な環境で育っていた肝臓がんなどの細胞は24時間くらいたつと飢餓で死んでしまうのに、膵臓がんの細胞は死なないことが観察されています。 このように膵臓がんはしぶといものですので、治療法の開発だけではなく、がんの発生原因をみつけて、がんを予防することができるように研究をすすめています。
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関節リウマチは、全身の関節に痛み、腫れ、変形などが起こる病気です。関節リウマチになると、TNFαという物質が関節で大量に存在するようになります。 TNFαはもともと人体にあるものなのですが、関節リウマチでは異常に増加します。多すぎるTNFαは、関節を包んでいる滑膜に炎症を起こし、関節に腫れ や痛みを起こさせ、また軟骨や骨を破壊(関節破壊)し、その結果関節が変形し動がなくなります。従来の消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬による治療では、関節破壊 の進行を止めるのは困難でした。しかし、新しい治療薬レミケードは、TNFαにくっついてその働きをおさえることで関節リウマチの症状をやわらげるととも に、関節破壊をくい止める効果に優れています。
また、これまでの抗リウマチ薬では、効果発現までに1~数カ月を要するに対して、レミケードは1回点滴静注後2週間以内に効果が表れるという特徴がありま す。主な副作用は、点滴投与時のアレルギー反応と、体の抵抗力低下があります。このため、感染症にがかりやすくなる可能性があります。特に、過去に結核に 感染された患者さんは、結核の再燃の可能性があるので、投与前に結核の感染歴の有無について検査しなければなりません。また、この治療にかかる患者さんの 負担は、体重33~66日Kg程度の人で、2割負担の場合、1回の治療に7万円程度の支払いが必要になり、経済的負担が大きいという問題があります。その ためレミケードによる治療を行うにあたっては、患者さんに効果、作用機序を含む有効性、安全性また経済的な間題についても説明し、十分な理解を得る必要が あります。
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一般に馴染みのある食べ物としてサツマイモを挙けることができます。
「そろそろ・・・・・」と思う季節、老若男女を問わず、サツマイモそのものから洋菓子の材料としてまで楽しまれているということに今さらながら驚きます。
現在では想像もし難い太平洋戦争中・戦後の日本国内の食糧不足を「サツマイモが救った」と言われるほど、保存が利き、栄養価の高いものなのです。それを 証拠付けるように、サツマイモは多量のビタミンCや力ロチン、食物繊維、力リウムなどを含んでいます。このことは抗がん作用、便秘予防、動脈硬化・高血圧 予防などを促します。さらに老化予防や美肌効果にも繋がります。長い活躍にはこのような理由もあるのですね。もちろん、「甘い」サツマイモにはそれだけの 糖分がありますし、菓子の材料となればなおさらのこと。自身に適度な量を食べることは、栄養について改めて考えることになり、その豊かさを明白に伝える活 力ともなるでしょう。