院内誌まほろば101号
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表紙
「談山神社」
談山神社は桜井市多武峰(とうのみね)にある神社で、桜と紅葉の名所として知られています。
中大兄皇子と中臣鎌足が、大化の改新の談合をこの多武峰で行い、後に「談い山(かたらいやま)」と呼んだことが名前の由来とされています。撮影 薬剤部 木根 燈子
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「高血圧」
臨床研修医 伊藤 千貴
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高血圧は耳にすることの多い病気だと思います。診察室で血圧を測ることが定番となっている方も多くいらっしゃると思われます。なぜ血圧が高いといけないのかというと、その後多くの病気につながってしまうためです。慢性的な高血圧には自覚できる症状はないものの徐々に血管にダメージが蓄積され、脳卒中や心筋梗塞などの心血管系の疾患に発展してしまうことがあります。また、そのほかにも心臓や腎臓の機能が落ちてしまったり、目が見えにくくなることもあります。これらの病気に発展すると治療のための薬剤が必要になったり、場合によっては後遺症が残るなど日常生活に大きな影響を及ぼしてしまうため、高血圧を治療することでこれらの病気を予防することが重要です。
なぜこの高血圧が起きるのかというと、多くの場合生活習慣が原因となっているため、普段の生活を見直していただくことが治療の第一歩となります。適度な運動や塩分を控えること、禁煙、適正体重で安定させることなどが挙げられます。特に塩分はこの中でも重要視されています。日本食は塩分が高いと言われ、気をつける必要があります。厚生労働省が提唱する塩分の目標値は男性7.5g、女性6.5g(本人の状態より数値は異なります)となっています。しかし実際の塩分摂取量は平均して男性11g、女性9.3gと大幅にオーバーしているようです。塩分を減らすには普段の味付けを薄めにすることや、ラーメンなどの汁を残すこと、外食など塩分が高いと思われる食事を避けるなどの方法があります。また、野菜や果物に含まれるカリウムは塩分を体から出す作用があり、積極的に摂取することも血圧を下げる手助けになります。
これまで気にして来られなかった方もぜひ一度血圧を測ってみてください。
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「特例承認・緊急承認」
薬剤師 池田 晴美
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令和4年11月に初めて国内製薬会社が開発した新型コロナウイルス感染症治療薬、ゾコーバ錠が緊急承認されました。
これまでベクルリー点滴静注用・ラゲブリオカプセルなどが特例承認されましたが、緊急承認や特例承認とはどのようなものなのでしょうか。
通常の新医薬品では臨床試験(治験)で有効性・安全性を確認した後に申請を行い承認されます。承認審査には約1年を要します。
特例承認は「緊急時に健康被害の拡大を防止するため、当該医薬品等の使用以外に適当な方法がない場合、外国(日本の薬事制度と同等の水準を有する国=英国・カナダ・ドイツ・フランス・アメリカ)において販売等が認められている医薬品等に承認を与えるもの」です。申請時には有効性・安全性の確認は必要ですが、通常よりも簡略化された手続で承認が可能です。ベクルリーは申請から承認まで3日、ラゲブリオは13日という短さでした。
緊急承認は特例承認より更に迅速に承認を行うことができる制度として令和4年5月に創設されました。海外でまだ流通していない医薬品等も対象とし、治験完了前でも安全性が確認され、有効性が「推定」できれば簡略化された手続で承認することができます。ただし、2年以内に有効性の確認を行い再度承認申請することが必要です。緊急承認制度により、必要な医薬品等の早期実用化が可能になりました。
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「冷えから身体を守る」
管理栄養士 三木 陽美
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冷え症とは、手足の先端、腰など体の一部が冷えやすくなる状態のことを指します。放置すると頭痛や肩こり、しびれ、便秘や下痢などの症状や不眠などもみられるため注意が必要です。
「冷え」は、貧血、甲状腺機能低下症、新陳代謝障害、胃腸障害、循環障害、更年期障害、生活様式、食生活などさまざまな原因により発症すると考えられています。食生活との関連では、特に不規則な食生活や偏食・過食、ストレスは冷えにつながることが報告されています。予防するために注意すべきポイントを紹介します。
①バランスの良い食事を心がける
主食、主菜、副菜を一緒に摂りましょう。体重増加を恐れ、極端に食事量を減らすことや、丼物や麺類のみ等偏った食事は控えましょう。冷え症の方は動物性たんぱく質が不足しているとの報告もあるため、摂取するよう心がけましょう。
②身体を温める食材を摂る
生姜(ショウガオール)や、にんにく(アリシン)、トウガラシ(カプサイシン)やコショウ(ピペリン)等の香辛料は、血流を改善し血行促進作用もあるためおすすめです。
③生活リズムを整える
十分な睡眠時間を確保し、ストレスを溜めずリフレッシュできる時間を作りましょう。
疾患があり、治療中の方は注意が必要な食材もあるため、医師や管理栄養士に確認してください。
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「言葉のリハビリ」
言語聴覚士 池田 史
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言語聴覚士のリハビリといえば、当院では嚥下障害のリハビリのイメージが強いかもしれませんが、言語聴覚士というからにはもちろん言葉のリハビリも行っています。
言葉のリハビリといってもいろいろとありまして、対象となる言語障害の種類によって違ってきます。
では、言語障害にはどのようなものがあるのでしょうか。おおまかに申し上げますと、失語症、構音障害、音声障害などがあります。失語症は脳の言語野がダメージを受けることによって起こる言語機能の障害になります。言葉の理解ができなくなったり、言葉自体が出にくくなってしまったりします。構音障害は唇や舌に麻痺が出てしまうことにより発音が不明瞭になってしまいます。音声障害は主に声帯に問題が生じることで声が出なくなったり、声がガラガラになったりしてしまいます。言葉の障害というのは実際に経験しないと分かりにくいものですが、相手に自分の言いたいことが伝わらないというのはかなりストレスのたまるものです。完全に元通りに回復するというのはなかなか難しかったりもするのですが、コミュニケーションが出来る限りスムーズに行えるようになるようサポートしていきたいです。